岐阜県本巣市で、先代から60年以上続くクリーニング業を営んできた佐野様。店舗・作業場の設備老朽化、高齢者のお客様への対応、将来の人材確保など、複数の経営課題を抱えていました。
そこで江尾税理士が提案したのが、岐阜県の令和8年度「中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金」の活用です。設備投資を単なる更新で終わらせず、売上拡大と働きやすい職場づくりを組み合わせた事業計画を策定。300万円の満額採択につながりました。
どのように投資内容を組み立て、補助金申請を進めたのか。実際の打合せをもとにご紹介します。
株式会社KOUYAは、岐阜県本巣市に拠点を置くクリーニング業者です。先代が1960年に始めた事業を佐野寛昌様が引き継ぎ、「洗濯本舗 紺屋」として運営してきました。
工場や事業所の作業着、リネン類などの法人向けクリーニングを中心に、一般のお客様向けのサービスも展開しています。2026年には法人化し、株式会社KOUYAとして新たなスタートを切りました。
― 補助金を活用しようと考えたきっかけと、当時の課題を教えてください。

江尾:
以前から店舗の入口や照明など、設備を改善したいというお話がありましたよね。今回、特に気になっていたのはどの部分でしたか。
佐野様:
まず照明ですね。作業場や店頭の蛍光灯をLEDに替えたいと考えていました。
それから入口のサッシも替えたかったんです。サッシを替えると周りの大工工事も必要になるので、どうせならクロスや床も一緒にきれいにしたいと思っていました。
江尾:
設備の更新は必要ですが、今回の補助金では、設備投資によって何を実現するのかが重要になります。
佐野様の場合、長年の技術力や取引先との信頼関係という強みがあります。一方で、地域では同業者の高齢化や廃業も進んでいます。
そこで、今後の売上拡大につながる店舗づくりと、働きやすい作業環境の整備を組み合わせて考えることにしました。
佐野様:
設備を替えたいという希望はいろいろありましたが、どこまで補助金の対象にできるのかは分からなかったので、そこも含めて相談しました。
― 高齢者が利用しやすい店舗づくりを、どのように事業計画に結び付けたのでしょうか。

江尾:
今回の計画では、高齢のお客様が安心して来店できる店舗にすることを、一つの柱にしました。
近隣のクリーニング店が廃業する中で、新たにお客様を受け入れる機会も考えられます。
そのため、入口の段差解消、手すりの設置、開閉しやすい扉への改修などを検討しました。
佐野様:
入口のサッシを替えるなら、周りの壁も工事することになりますし、床のクッションフロアも全部替えたいと思っていました。
古い壁なので、クロスを貼り直すだけでは難しく、下地から工事が必要だという話も聞いていました。
江尾:
そこで、実際に必要な工事と補助金の対象として申請する工事を整理しました。
大切なのは、単なる内装の美装ではなく、来店時の負担を軽減し、安全性や利便性を高めることです。
高齢のお客様が来店しやすい環境を整え、新規顧客の獲得につなげるという目的を明確にして、事業計画に盛り込みました。
― LED照明やエアコンの導入は、働き方改革とどのような関係があるのでしょうか。

佐野様:
LED照明は、器具ごと交換するのか、どこまで工事するのかによって費用も変わりますよね。
エアコンについても、作業場に設置するなら、それなりの金額になると思いました。
江尾:
そうですね。今回の制度では、高齢者や短時間勤務を希望する方など、多様な人材が働きやすい環境を整える取り組みも支援対象になっていました。
例えば、LED照明を導入して作業場を明るくし、作業効率や安全性を改善すること。
また、エアコンを設置して夏場の作業環境を改善し、高齢者や女性を含めた従業員が働きやすい環境を整えることです。
佐野様:
なるほど。単に照明やエアコンを新しくするということではなく、働く環境を良くするための設備投資ということですね。
江尾:
そのとおりです。
今後、家族以外の人材も活用していくことを考えると、働く人にとっての環境整備は重要です。
設備投資と人材確保の取り組みを関連付けることで、補助金の目的に合った事業計画を検討しました。
― 補助金300万円の満額採択を目指して、どのように投資計画を組み立てたのでしょうか

江尾:
今回の制度では、職場環境整備費は補助率10分の10、その他の対象経費は3分の2という枠組みがありました。
補助金の上限は300万円です。
例えば、職場環境整備に100万円、それ以外の対象経費に300万円を計上できれば、総額400万円の投資に対して、補助金300万円を目指せる計算になります。
佐野様:
そうすると、LED照明とエアコン、それから入口の改修を組み合わせて考えるわけですね。
あと、作業場のことも相談しましたね。
江尾:
はい。まずは作業や荷造りに使えるスペースとして整備する案を検討しました。
ただし、倉庫や作業場は構造によって補助対象になるかどうかが変わります。
そのため、施工業者と相談しながら、どの部分が制度の対象になるのか確認する必要がありました。
佐野様:
まずは必要なところを作って、後から追加する方法も考えました。
江尾:
補助金を使うために不要な設備を購入するのではなく、もともと必要としていた投資を整理して、制度の範囲で効率よく進めることが大切です。
― 申請書の作成や施工業者との調整は、どのように進めましたか。

江尾:
今回の申請期限は5月15日でしたので、時間的には余裕がありませんでした。
申請書には押印が必要なものもありましたので、先に準備できる書類は提出していただき、事業計画や経費の内容を詰めていきました。
また、施工業者とも工事内容や概算見積もりについて調整しました。
佐野様:
工事の範囲によって金額が変わりますし、LEDやエアコンも実際にどのような仕様にするかで費用が違います。
入口もサッシだけではなく、壁や床まで考えていたので、どこまで含めるのかという話をしましたね。
江尾:
そうですね。
申請書には「工事一式」と書けばよいわけではありません。
どのような工事を行うのか、それによって何が改善されるのかを具体的に説明する必要があります。
また、補助金は採択後にも交付申請や実績報告などの手続きがあります。
申請時の計画と実際の工事内容が整合することも考えて、事業計画を作成しました。
― 今回、補助金300万円が満額採択されました。今回の支援を振り返って、いかがですか。

江尾:
今回、申請した補助金300万円が満額採択されました。
佐野様が以前から考えていた設備投資を、店舗環境の改善、働きやすい職場づくり、今後の事業拡大という複数の目的に整理し、一つの計画にまとめることができました。
佐野様:
これからも仕事はできるだけ長く続けたいと思っています。
法人のお客様との取引もありますし、一般のお客様も大切にしていきたいです。
設備のことも含めて、今後のことを考えていきたいですね。
江尾:
今回の補助金申請と並行して、佐野様は個人事業から株式会社KOUYAへの法人化も進められました。
補助金の活用と法人化は別々の手続きですが、どちらも今後の経営をどうしていくかという大きなテーマにつながっています。
税理士として、これからも設備投資、資金繰り、税務など、経営全体を継続してサポートしていきたいと考えています。
編集後記
今回の株式会社KOUYA様の事例は、老舗クリーニング店が設備の老朽化や将来の人材確保という経営課題を整理し、補助金申請につなげたケースです。
みずほ会計事務所では、LED照明やエアコンの導入、店舗入口のバリアフリー化、作業スペースの整備といった投資内容について、施工業者との調整も含めて事業計画の策定を支援しました。
その結果、岐阜県の「中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金」300万円の満額採択を実現しました。
補助金は採択されることが目的ではありません。事業に必要な投資を実現し、その後の売上拡大や生産性の向上につなげることが重要です。
みずほ会計事務所では、日頃から経営状況を把握している税理士事務所として、事業計画の策定から補助金申請、設備投資、税務顧問まで一貫した支援を行っています。
取材・構成:実際の相談記録をもとに編集
インタビュアー:江尾 友宏