コロナ禍による経営危機をきっかけに、みずほ会計事務所の江尾税理士と二人三脚で経営再建計画を策定。感覚的だった経営判断を数字に基づく明確な指標へと変え、社内の経営情報をオープンにしたことで、業績は計画を上回る回復を見せています。
本事例では、インタビューを通じて、危機を乗り越える中で培われた強固な信頼関係と、同事務所の伴走支援のあり方についてご紹介します。
髙井基礎産業有限会社は、地盤調査から設計・施工管理まで自社内でワンパッケージにて対応できる体制を強みとする、岐阜県の地盤補強工事専門会社です。CPP工法・ピュアパイル工法・エコジオ工法など多彩な工法を取り扱い、現場の地盤条件に最適な工法を提案されています。
—顧問を依頼された当初は、どのような経緯・状況だったのでしょうか。

髙井様:
「一番最初は、私の前任の経理担当者を通じた繋がりでした。江尾さんのお知り合いの方が税理士事務所に勤めていらっしゃって、そのご縁で顧問をお願いすることになったのが経緯です」
江尾:
「そうでしたね。私が関与させていただいた当初から数年間は、主に経理担当の方と会計処理のやり取りをさせていただいておりました」
髙井様:
「当時の私は経理に全くタッチしておらず、実務は担当者に全部任せきりだったんです。なので、税理士さんがどんな方かも全然知りませんでしたし、江尾さんと直接お話しする機会もほとんどありませんでしたね」
江尾:
「ただ、担当の方もお忙しかったようで、なかなか会計入力が進まない状態が続いていたんです。その結果、年に1回の決算にならないと最終的な数字がわからないような状況に陥っていました」
髙井様:
「私は任せきりだったので、細かいことは正直あまりよくわかっていなかったんですよね」
江尾:
「はい。経営的にも少し危うい状況でしたし、金融機関からの要請もあったため、私から『まずは毎月の経理をきちんとしましょう』というご提案をさせていただきました」
—実際に毎月の経理を見直してみて、どのようなことが分かったのでしょうか。

髙井様:
「以前は、担当者から出される試算表上では毎月何千万も黒字になっていて、『会社は儲かっているんだな』と思っていたんです。それなのに、いざ決算のときになると急に『赤字だよ』と言われて、『何で?』と驚きましたね」
江尾:
「中小企業ではよくあるケースなのですが、当時の担当者の方が会計のルールを十分に理解していなかったことが原因でした。正しいルールで処理をした結果、初めて会社の本当の数字が見えてきたんです」
髙井様:
「私自身は経理のノウハウも全くなかったので、もう江尾さんに全部お願いするしかないと。それで、会社の情報をすべて開示して、実務をお任せすることにしました」
江尾:
「そこから私が毎月会社へ伺い、最初は黙々と経理の仕事をさせていただいていました。ただ、コロナ禍の影響などもあって売上が下がり、資金繰りも含めて経営的にかなり苦しい時期に入っていったんですよね」
髙井様:
「ええ。そんな一番大変なときに、江尾さんから『経営的なことも一緒にやりましょうか』と声をかけていただいたんです。私にとっては、一緒に会社を立て直してもらった恩人ですね」
江尾:
「金融機関からの要請もありましたし、会社を完全に回復させるための経営計画を作る必要がありました。そこから、単なる経理処理だけでなく、本格的に経営再建をサポートさせていただくことになりました」
—経営再建のプロジェクトは、具体的にどのように進められたのでしょうか。

江尾:
「金融機関からの要請もあり、会社が完全に回復するまでの経営再建計画を一緒に作ることになりました。10年間での返済を目指す計画を立てるため、まずは『何をして利益を上げていくか』を徹底的に話し合いましたね」
髙井様:
「はい。金融機関からは『無理な計画ではなく、実質可能な範囲での計画を』と言われていました。そこで、江尾さんと一緒にSWOT分析などを使って、自分たちの『強み』や『弱み』を徹底的に洗い出していったんです」
江尾:
「税務申告のための決算書だけでは見えない人工(にんく)や経費など、ミクロ単位のところまで落とし込んでいきました。過去の振り返りから今後の見込みまで、トータルで10時間ほどかけてじっくりお話をお聞きしましたね」
髙井様:
「私の中で今まで感覚でしかなかったものが、江尾さんと話し合うことで『数字として目に見えるもの』に変わっていったのは本当に大きかったです」
江尾:
「設計から施工管理まで社内でワンパッケージでできるという会社の強みや、逆に人材教育という課題などを再確認して、どう改善して利益を上げていくかのアクションプランを作っていきましたね」
髙井様:
「自分たちの強みがはっきりしたので、『この強みの部分をどんどん強化していけばいいんだ』とすんなり腹落ちして進めることができました。私としては、もう迷うことなくやるべきことに集中できたという感覚でしたね」
—計画策定後、すぐに実行へとスムーズに進んだのでしょうか?

江尾:
「実は、そこからが大変でした。本来なら数ヶ月で終わるはずの計画承認が、銀行側の内部処理などで止まってしまい、結果的に1年弱かかってしまったんです」
髙井様:
「私は『なるようにしかならない』と思っていたので、そこまで深くは考えていませんでした(笑)。ただ、一度失敗したものを元に戻すのは本当に大変だな、とは感じていましたね」
江尾:
「10年で立てた計画を『本部から5年で作り直してと言われた』と差し戻されたこともありました。そこから銀行の支店長、社長、私の3人で何度も話し合いを重ね、なんとか交渉を続けていきました」
髙井様:
「江尾さんが銀行との間に立って、粘り強く交渉をまとめてくれたのは本当に助かりました。私一人では到底対応できなかったと思います」
江尾:
「計画をもう一度やり直すかというレベルの局面もありましたが、結果的に承認を得て、実行に移すことができて本当によかったです」
髙井様:
「ええ、本当に。そこからようやく本格的な実行フェーズに移ることができました」
—数字に基づく計画を実行し始めてから、社内にはどのような変化がありましたか?

髙井様:
「江尾さんとの話し合いで『骨太の方針』を作り、それを社内でどう実行していくかという肉付けは、社員と一緒に進めていきました」
江尾:
「私が関与させていただくのは、主に計画の策定と定期的なモニタリングまでです。社内での具体的な実行や落とし込みについては、髙井社長が中心となって進められていましたね」
髙井様:
「はい。一番お金の面で苦しんだので、もう隠すことはやめようと決め、会社の経営情報を全て従業員にオープンにしたんです」
江尾:
「日々の資金繰り表なども社内で作成されるようになり、『今月はこういうお金の流れになるから、ここで資金が厳しくなるね』といった情報まで共有されるようになりましたよね」
髙井様:
「ええ。それに合わせて、給与体系も成果連動型に変えました。やればやるほど還元される仕組みにしたことで、みんなの目の色が変わり、社内の雰囲気も非常に前向きになりましたね」
江尾:
「すべての情報がオープンになったことで、全員が経営に参加しているような素晴らしい状態になり、会社の業績もどんどん良くなっていきましたね」
—業績が回復してきた現在、何か新たな課題などは感じていらっしゃいますか?

髙井様:
「ありがたいことに売上がトントン拍子で上がっているのですが、高い目標を目指していくと、今度は『マンパワーの不足』という新たな壁に直面しています。人を増やせばコストもかかるので、そのバランスが課題ですね」
江尾:
「売上が上がっていくのは素晴らしいことですが、今度は人員増やコスト管理といった別の次元の課題が出てきますからね」
髙井様:
「ええ。なるべくコストはかけたくないという思いもあるので、今はそこを江尾さんに相談しながら進めているところです」
江尾:
「闇雲に売上だけを追うのではなく、助成金の活用なども含めて、会社にとってちょうどいいバランスで成長できるようなご提案をさせていただいています」
髙井様:
「私が気がつかないところにも、江尾さんはどんどんと気づいてアドバイスをくれるので、本当に心強いです」
江尾:
「引き続き、適切なペースでさらに成長できるよう、しっかりとサポートさせていただきます」
—今後の展望や、江尾さんへの期待について教えてください。

髙井様:
「できる限り自分が現役でいる間に、借入金をゼロにしたいと思っています。江尾さんと作った10年の返済計画を、できれば5年〜7年くらいに前倒しして完済できたらいいなと」
江尾:
「計画を作っている最中から売上も利益も上がってきて、現在すでに計画を上回るペースで推移していますよね。これも髙井社長をはじめ、従業員の皆様の頑張りがあったからこそだと思います」
髙井様:
「ありがとうございます。江尾さんには、今後も今のままで会社を助けてもらえればと思っています。江尾さんは余分なことは言わず、やるべきことを淡々とやってくれる『職人』のような方ですから」
江尾:
「そう言っていただけて光栄です。売上が上がっていくのは素晴らしいことですが、今後は人員増やコスト管理など、また別の課題も出てきますからね」
髙井様:
「ええ。変に持ち上げたり突き落としたりすることもなく、常に冷静で間違ったことをしないので、本当に信用に値する人だと思っています。私にとっては『一緒に会社を立て直してもらった恩人』です」
江尾:
「ありがとうございます。経営は立ち止まらずに続くものですから、今後はこの好調な状態を維持し、適切なペースでさらに成長できるよう、助成金の活用なども含めて引き続きしっかりと伴走させていただきます」
編集後記
髙井社長、貴重なお話をありがとうございました。 今回の取材を通して強く感じたのは、経営のピンチをチャンスに変えた強固な信頼関係と、税理士がいかに経営の伴走者として重要な役割を果たすかということです。
感覚的だったものを数字に落とし込み、全社員で共有するというプロセスは、単なる資金繰り改善にとどまらず、会社全体の意識を変える強力な原動力となりました。銀行との粘り強い交渉や、新たな課題へのアプローチからも、みずほ会計事務所が提供する真の伴走支援の価値が伝わってきます。
現役中の借入金ゼロという目標に向けた、髙井基礎産業有限会社様の今後のさらなるご発展を応援しております!
インタビュアー:榎本元(株式会社グットアップ)