みずほ会計事務所
代表税理士 江尾 友宏
2011年に税理士登録。そして、2016年に独立開業。現在は地元・瑞穂市で「みずほ会計事務所」の代表税理士を務める。現在は、融資や補助金の活用、事業計画の策定を通じて、この街で事業を始める人を全力でサポートしている。また、地域の皆さんが相続や資産のことで不安を抱えずに暮らし続けられるよう、相続のサポートにも力を入れている。
CONTENTS
[経営計画]
「BCPという言葉は聞いたことがあるけれど、大企業が作る防災マニュアルのようなものでは?」
そう考えている中小企業経営者の方も多いのではないでしょうか。
BCPは、地震や水害などが発生したときに会社を守るための計画です。
しかし、中小企業にとっては、それだけではありません。
国の**「事業継続力強化計画」**の認定制度を活用することで、
日本政策金融公庫による低利融資
信用保証に関する特例
補助金審査での加点
防災・減災設備に関する税制措置
など、経営上のメリットにつながる場合があります。
「BCPという言葉は聞いたことがあるけれど、大企業が作る防災マニュアルのようなものでは?」
そう考えている中小企業経営者の方も多いのではないでしょうか。
BCPは、地震や水害などが発生したときに会社を守るための計画です。
しかし、中小企業にとっては、それだけではありません。
国の**「事業継続力強化計画」**の認定制度を活用することで、
など、経営上のメリットにつながる場合があります。
つまりBCPは、単なる「もしものときの防災対策」ではなく、設備投資、資金調達、補助金申請まで含めた経営戦略の一つとして考えることができます。
岐阜県内の中小企業の皆さまにも、ぜひ知っていただきたい制度です。
BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では事業継続計画と呼ばれます。
地震、水害、感染症、停電、サイバー攻撃などの緊急事態が発生した場合でも、
「重要な仕事をできるだけ止めない」
あるいは、
「止まってしまっても、できるだけ早く復旧する」
ために、平常時から準備しておく計画です。
例えば、
といったことを事前に整理します。
BCPは避難訓練だけではありません。
「会社の経営を止めないためには何が必要なのか」を考える計画です。
岐阜県内の企業が考えるべきリスクは地震だけではありません。
岐阜県が作成している「岐阜県BCP基本モデル」も、現在は、
などへの対応を想定しています。
岐阜県では、木曽川、長良川、揖斐川をはじめ多くの河川があり、地域によっては水害への備えも重要です。
瑞穂市、岐阜市、大垣市、本巣市、羽島市などの企業でも、自社建物そのものが被災しなくても、
「道路が通れず従業員が出勤できない」
「仕入先から材料が届かない」
「配送が止まる」
「停電で工場の機械が動かない」
といった形で事業が止まる可能性があります。
また最近では、自然災害だけではなくランサムウェアなどのサイバー攻撃によって、パソコンや業務システムが使用できなくなるリスクも無視できません。
岐阜県自身も、水害やサイバー攻撃まで含めたBCPモデルを県内企業向けに公開しています。
ここが今回の記事で最も重要なところです。
一般的なBCPは、企業が自主的に作る事業継続計画です。
一方で、事業継続力強化計画は、中小企業が作成した防災・減災に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。
中小企業庁は、この制度を**「中小企業のための取り組みやすいBCP」**と位置付けています。
したがって、
「社内でBCPを作った」=「融資や補助金で優遇される」
ということではありません。
金融支援や補助金加点などの制度上のメリットを利用するには、基本的には事業継続力強化計画を作成し、国の認定を受けることがポイントになります。
事業継続力強化計画の認定企業には、日本政策金融公庫による金融支援があります。
認定された事業継続力強化計画に基づいて設備投資等を行う場合、一定の融資について基準利率から最大0.9%の金利引下げを受けられる制度があります。
例えば、
などへの投資を考えている場合には、設備投資計画と合わせて検討する価値があります。
ただし注意が必要です。
事業継続力強化計画の認定を取ったからといって、現在借りている融資の金利が自動的に0.9%下がるわけではありません。
認定計画に基づく対象資金について、別途、日本政策金融公庫による融資審査があります。
そのため、
「BCPを取れば借入金が全部安くなる」
という制度ではありません。
一方で、これから設備投資をして資金調達を予定している会社であれば、事前に検討する意味があります。
民間金融機関から融資を受ける場合についても支援措置があります。
事業継続力強化計画の認定を受けた企業が、その計画を実行するために融資を受ける場合、一定の要件の下で信用保証について通常枠とは別枠で追加保証を受けられる制度があります。
現在の制度では、例えば普通保険について、
通常枠2億円+別枠2億円
という仕組みがあります。
無担保保険についても、
通常枠8,000万円+別枠8,000万円
といった特例があります。
もちろん、計画の認定を受ければ必ず融資されるわけではありません。
金融機関や信用保証協会による審査は別に行われます。
それでも、
「今後設備投資をしたい」
「金融機関から追加融資を受ける可能性がある」
という会社にとっては、知っておく価値のある制度です。
中小企業にとって特に注目したいのが、補助金の加点です。
事業継続力強化計画の認定は、一部の国の補助金で審査上の加点項目になっています。
2026年現在公募されている、
「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」第1回公募
でも、加点項目の一つとして、
申請締切日時点で有効な「事業継続力強化計画」または「連携事業継続力強化計画」を取得している事業者
が明記されています。
つまり、
同じような内容の補助金申請で競争するのであれば、こうした認定を取得していることが採択審査上のプラス材料になる場合があります。
もちろん、
認定を取れば補助金に必ず採択されるわけではありません。
事業計画そのものの内容が最も重要です。
しかし、補助金を利用する可能性がある会社であれば、申請直前ではなく、平時から準備しておくことには意味があります。
ここも重要です。
事業継続力強化計画は、今日申請して明日認定される制度ではありません。
国が示している標準処理期間は約45日です。
また、初回申請は原則電子申請で、GビズIDプライム等も必要になります。
そのため、
「良い補助金が出てきた」
↓
「事業継続力強化計画が加点になるらしい」
↓
「では今から取ろう」
では、補助金の締切に認定が間に合わない可能性があります。
補助金の加点に利用したいのであれば、補助金申請の有無にかかわらず、早めに整備しておく方が使いやすい制度です。
事業継続力強化計画には、融資や補助金だけでなく税制上の支援もあります。
一定の要件を満たす中小企業が事業継続力強化計画等の認定を受け、その計画に記載した対象設備を取得した場合には、
中小企業防災・減災投資促進税制
を利用できる場合があります。
2026年8月時点の制度では、一定の対象設備について取得価額の16%の特別償却が設けられています。
対象となり得る設備には一定の要件があり、例えば、
などがあります。
注意したいのは、設備を買ってから、
「そういえばBCPの税制が使えないか?」
と考えるのでは遅い場合があるという点です。
原則として、計画の認定と設備投資の順序を含めて事前に制度要件を確認する必要があります。
したがって、防災設備等への投資を考えている会社は、購入前に税理士等へ確認することをおすすめします。
実は、BCPを作る一番大きなメリットは、融資や補助金だけではないかもしれません。
BCPを真剣に作ると、
「この会社は何が止まったら仕事ができなくなるのか」
が見えてきます。
例えば、
「この仕事は社長しか分からない」
「この機械が壊れたら生産が完全に止まる」
「この仕入先から買えなくなったら代替先がない」
「会社のパソコンが壊れたら顧客情報を復旧できない」
「メインバンク以外に緊急時の資金調達先がない」
ということに気付くかもしれません。
これは災害時だけの問題ではありません。
従業員の退職、設備故障、取引先の倒産、サイバー攻撃など、通常の経営でも発生するリスクです。
BCPの策定は、自社の経営リスクを棚卸しする作業でもあります。
中小企業のBCPで、何百ページものマニュアルを最初から作る必要はありません。
まずは「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つに分けて考えると分かりやすくなります。
例えば経理担当者一人しか給与計算の方法を知らなければ、その人が出勤できないだけで給与計算が止まります。
これも立派な事業継続リスクです。
製造業や建設業では特に重要です。
災害発生後も、
などの支払いは続きます。
例えば売上が2か月止まった場合、
「会社にいくらの現預金が必要なのか」
「どこから緊急融資を受けるのか」
まで考えておく必要があります。
BCPは、実は資金繰り計画とも密接に関係しています。
などが消失した場合、本当に復旧できるでしょうか。
「バックアップを取っています」
というだけでは十分とは限りません。
同じ建物の中にバックアップデータがあれば、建物そのものが被災すると一緒に失われる可能性があります。
クラウド、遠隔地バックアップ、復元テストなども含めて検討します。
例えば岐阜県内の製造業であれば、
などを整理します。
建設業であれば、
などが考えられます。
などがあります。
業種によって、守るべきものは全く違います。
だからこそ、ネットからBCPのひな形をダウンロードして保管するだけではなく、自社の仕事に合わせて考えることが重要です。
「BCPを一から作るのは難しそう」
という中小企業向けに、岐阜県では、
「岐阜県BCP(事業継続計画)基本モデル」
や簡易モデルを公開しています。
現在のモデルでは地震だけでなく、水害、感染症、サイバー攻撃等についても考えられるようになっています。
ゼロから文章を作成する必要はありません。
まずモデルを使って、
「自社では何が問題になるのか」
を書き出していくだけでも、BCP作成の第一歩になります。
BCPでよくある失敗が、
「計画書を作って認定を取ったので終了」
となってしまうことです。
本来は、
「もし明日水害が起きたら、本当にこの計画どおり動けるか?」
まで考えなければ意味がありません。
例えば、
という状態では、計画書があっても実際には役立ちません。
少なくとも年に1回程度は見直し、
「連絡先は変わっていないか」
「新しい機械が増えていないか」
「新しいシステムを導入していないか」
などを確認する必要があります。
特に次のような会社は検討する価値があります。
一つでも当てはまるのであれば、BCPについて一度考えてみてもよいでしょう。
BCPの第一の目的は、災害等から会社、従業員、取引先を守り、事業を継続することです。
ただし、国の事業継続力強化計画認定制度まで含めて考えると、
「災害対策のためだけに手間をかけて計画書を作る」
というものではありません。
認定を受けることで、
などにつながる可能性があります。
さらに、計画を作る過程で、
「自社の仕事は誰に依存しているのか」
「何がなくなると会社が止まるのか」
「災害時に何か月資金が持つのか」
を見直すことができます。
これは防災というより、経営管理そのものです。
設備投資、融資、補助金申請を検討しているのであれば、それぞれをバラバラに考えるのではなく、
「設備投資+資金調達+補助金+事業継続力強化計画」
をまとめて検討することで、利用できる制度が増える可能性があります。
みずほ会計事務所では、岐阜県内の中小企業・個人事業主の皆さまについて、設備投資、資金調達、補助金、税制などを含めた経営支援を行っています。
「うちの会社に事業継続力強化計画を作るメリットはある?」
「今度設備を購入するが、融資や税制と組み合わせられないか?」
「補助金を申請したいが、先に取っておくべき認定はないか?」
といった場合には、設備を発注したり補助金の締切直前になったりする前に、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年8月27日時点の制度に基づいて作成しています。融資、税制、補助金等は適用要件や公募内容が変更される場合がありますので、実際の利用時には最新の制度をご確認ください。
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